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日本に唯一残された金脈『観光産業』しかしながら、日本の観光資源アピール不足は深刻である
かつては内需の強さで国家の経済を支えてた日本。
現在は成熟した先進国となり、少子高齢化という大きな問題を抱え、21世紀の産業であるITの分野でも遅れをとっており、日本が大きく経済成長できる分野というものがなかなか見当たらない状況になっています。
そのような中で、唯一残された金脈であり『第2の高度経済成長期』すら狙える可能性を持つ事業が『観光産業』です。
世界の観光客数は日々増え続けており、

2014年(平成26年)の国際観光客は前年比5100万人増の11億3800万人
日本を観光先として捉える人々も多くなってきました。
訪日外国人観光客は、2015年に過去最大で約2000万人にもなりました。

2015年の(平成27年)訪日外国人旅行者数は1,974万人に達した
更に、今年3月30日、首相官邸から発表された「明日の日本を支える観光ビジョン」構想会議では、
2020年 4,000万人
2030年 6,000万人
という数値目標を掲げています。
そう、日本の観光立国化は『国策』なのです。
では、この数値目標は予定通り達成できるのでしょうか?
私は今のままでは危険だと思っています。
なぜか?
それは『観光資源アピールがあまりにもヘタクソだから』です。
日本は外国人に刺さる観光資源アピールが必要なのです。
今回は、日本の観光資源アピール不足についてお伝えいたします。
文化財における観光資源アピール不足
日本には、2428件、4695棟もの指定文化財があります。
この多くは観光資源としても非常に高い価値をもっており、整備次第では訪日外国人観光客の方々に「日本の文化」「日本の歴史」などを感じて
いただける最高の観光ツールです。
ところが現状これらの文化財の多くが、まともな説明パネルも、パンフレットも公式Webサイトも無く、大半が『ただそこに置かれるだけ』の状況になっています。
観光に多くのお金を落とす欧米、オーストラリアからの外国人観光客は「文化や歴史などに対する知的探究心を満たしたい」というニーズが強いわけですが、日本の文化財の多くはこのニーズに十分に応えることができていません。
一部英語表記のパネルやパンフレットを用意しているところでも、Google翻訳をベタ貼りしたような、直訳すぎて役割を為していないようなものであったり、ある程度の背景を知っていることが前提となった解説表記でしか無いため、訪日外国人観光客にはとても不親切です。
もちろん英語だけでなく、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、タイ語、マレー語、ロシア語など、さまざまな多言語に対応することも必要でしょう。
日本の観光産業は、これまで内需だけで十分まかなえていた為に、外国人への対応が本当にテキトーです。
ハッキリ言って、お客様を迎える態勢になっていません。
文化財においては、完全に観光資源アピール不足です。
現場のパネルやパンフレットのみならず、Webを使った日本の文化財における情報発信(詳細な文化、歴史背景を含む)は今後必須事項となっていくことでしょう。
どうでも良い話ですが、ルーヴル美術館のモナリザは、あまりにも高い位置にポツンと掲げられていて、その下に人間がウジャウジャと集まっており、美術品と人間の対比が、なんだか滑稽な姿に見えてしまった記憶があります。
「ミロのヴィーナス」に匹敵する「国宝 阿修羅像」を多くの外国人は知らない
日本の美術史家で東北大学名誉教授 田中英道先生の「日本美術の世界的価値」という講義を受けたことがあります。
講義の中で非常に印象深く残っているのが、「国宝 阿修羅像」は「ミロのヴィーナス」に匹敵する美術的価値があると述べられていたことでした。
ところが、日本人にとって美術作品というと、どうにも馴染みが少ない。
だから発信していない。
「ミロのヴィーナス」は世界中の人が知っています。そして、それを一目見るためにフランス・パリにあるルーヴル美術館に足を運ぶわけです。
それはごくごく一般的な観光コースです。

ルーヴル美術館
ところが、価値では負けていない「国宝 阿修羅像」はどうでしょうか?
そもそも世界の多くの人が「阿修羅像」を知らないでしょう。そして奈良県・興福寺に保管されていることはもっと知られていません。
「興福寺に阿修羅像を見に行こう!」
と考える外国人は、よほどのマニアです。少なくとも私はそのような外国人を一度も見たことがありません。
やはり日本人は観光資源のアピールが下手…いや、まだ手をつけていない(お高くとまっている)と言うのが正しい表現でしょう。
外国人に不親切な観光案内施策が多い
文化財に限らず、外国人に不親切な観光案内施策は多いです。
例えば、舞鶴市(京都)では、
『QRコード付き郵便ポストを情報発信拠点としたスマートフォン向け地域情報サービス』
という施策をやっています。
郵便ポストにQRコードを付け、スマホで読み取ると、その地域の観光情報が得られるというものです。
日本語を含む6ヶ国語に対応しており、誰でも認識しやすい郵便ポストを目印に使うことで、海外からの観光客の方に対しても効果的な情報提供が可能になる…
という趣旨のようですが、これもいささか疑問が残ります。
これも最初にはじめたのはフランスのボルドーです。
そして、この施策イマイチ認知が低いようで、ボルドーをよく旅行している友人に聞いても『知らない!』のひとこと。
さらにQRコードの世界的認知がイマイチで、普及が著しいと言われている欧州のトップであるドイツでも18.6%(QRコードをスキャンしたことのあるスマートフォンユーザー)の利用状況。
だいたい、訪日外国人観光客が『よし!ポストについているQRコードで観光情報を得るぞ!』という気持ちになるでしょうか?
多くの場合ポストなんてスルーされます。
いくら6ヶ国語に対応したところで、訪日外国人観光客はそもそもポストを使うことなんて無いのですから。
外国人が行く場所、見る場所に情報を設置する施策が望まれます。
どこまでもユーザー目線で無いのが、日本のインバウンド施策なのです。

まとめ
自然豊かで、気候が良く、多様な文化が残され、食事のおいしい日本は、十分に観光大国となれるポテンシャルを持っています。
しかしながら、発信が十分でなく、観光資源アピール&収益化がヘタクソなため、外国人にその魅力を伝えることができていません。
おもてなしの国と言いながら、不親切な施策ばかり。
このままでは、第二の高度成長期すら望める日本の最後の金脈『観光立国』という国策も、失敗に終わりかねません。
日本には、まだまだやらなくてはならないことがたくさんありますね。
2020年の東京オリンピックまでの4年間にどこまで整備が可能か??
ここに日本の『観光立国』施策の運命がかかっているのだと思います。