加工できない。準備できない。リアルを共有する。新しいコンセプトのソーシャルメディアプラットフォーム、「BeReal(ビーリアル)」が大人気です。
BeRealは、2022年7月、米国App Storeで1位を獲得し、新たなトレンドになっています。主に1990年代後半〜2010年生まれのZ世代に人気で、そのユニークなコンセプトはInstagramに変わるSNSとも言われ、話題になっています。
目次
BeReal(ビーリアル)とは、どのようなSNSなのか?
BeRealは、元GoPro社員のAlexis BarreyatとKévin Perreauによって2019年末にリリースされた、フランス発のSNSアプリ。2021年頃からフランス国内で話題となり、徐々にアメリカやイギリスで人気を獲得していきました。
公式サイトのキャッチフレーズには、
Your Friends for Real.
Everyday at a different time, everyone is notified simultaneously to capture and share a Photo in 2 Minutes.
A new and unique way to discover who your friends really are in their daily life.あなたの友達をリアルに。
https://bere.al/en
毎日違う時間に、全員に一斉に通知され、2分間で写真を撮影し、共有します。 日常生活の中で、あなたの友人の本当の姿を発見する、新しいユニークな方法です。
といった記載があります。
キャッチフレーズの通り、BeRealはリアルな日常を共有するSNSです。と、言うよりも、他のSNSでよく見られるような”作られた日常”を演出することができないシステムになっています。
BeRealの特徴 〜リアルに重点を置いたソーシャルメディアプラットフォーム〜
BeReal は、ユーザーが 1日に 1 枚のみ写真を共有し、フォロワーにリアルな自分を伝えることができる写真共有アプリです。
毎日ランダムな時間に「Time to BeReal」という通知が届き、その通知を受けてから2分以内に写真を共有しなくてはなりません。(遅れて投稿することも可能だが、遅れた事実もフォロワーに通知される。写真の取り直しも可能だが、取り直した回数も表示される。)
写真はバックカメラとフロントカメラで同時に撮影され、ほぼ、映える為の細工が不可能です。もちろんフィルターなどの加工アイテムも存在しません。僅か2分では、ライティングの調整の余裕もないでしょう。
ベストな自分を表現することが極めて難しく、より本来の日常に近い自分が共有されていくのがBeRealです。
極めてリアルな日常がストックされていくSNSと言えるでしょう。確かにこれまでのSNSにおいて、このようなコンセプトは見たことがありませんでした。
そのような特徴から、アンチ・インフルエンサー・ソーシャルメディア・アプリとも言われています。
また、これまでのSNSとは大きな違いが多数あります。
- 「いいね!」の数の表示が無い
- フィルター、編集機能が無い
- 動画投稿ができない
- フォロワー数が表示されない
- 広告が表示されない
これまでのSNSでは「いいね!」や「フォロワー」を集め、それを根拠に影響力を増してきたインフルエンサーがプラットフォームの主役の座を奪い合っていました。
BeRealではそれらの指標が一切存在しません。
BeRealは、新たなSNS文化、新たな価値を生み出す存在になっているのです。
「いいね!」はありませんが、他のユーザーとコミュニケーションと取るためのツールとして「RealMoji」という機能があります。投稿への反応を自撮り写真で表現するものです。まさにサムズアップマークや顔文字ではなく、自身の表情を使ったコミュニケーション、”リアルな文字”ですね。
BeRealが人気になった理由
BeRealが日本で紹介される際は、映える写真、盛られた自分を作ることに疲れた人達に響いた…(要するにSNS疲れ)
と、いうような報道が目立ちます。もちろんそのような側面もあるでしょう。どのユーザーも1日1回だけの投稿となる為、スクリーンタイムは抑えられ、他のSNSのような中毒性は低いのかも知れません。
しかしながら、実際にアメリカのユーザーを見ていると、
「いつ通知が来るかわからないスリルがある!」
「バックカメラ、フロントカメラの双方で撮影される為、身だしなみ等、気を抜けない!」
「最も準備が必要で、最も緊張感があり、最も疲れるソーシャルメディア!」
との声もよく見られます。アプリの特性から生まれる緊張感を楽しんでいるように見えます。
・映える必要がない、自然体の投稿ができる
・リアルな日常が突然晒されるスリルがたまらない
ユーザーは、そのような両方の側面を楽しんでいるのではないでしょうか。
実際に私もアカウントを立ち上げてみました。
BeRealから届く通知のタイミングは予測できない為、不適切なタイミングとなってしまうこともあります。しかしながら、その不適切な場所、タイミングというものが、思わぬ話題を呼ぶような投稿となり、バズを起こすことも多いようです。もちろん、有名人と会った瞬間、結婚式で投げられたブーケをキャッチした瞬間など、奇跡のタイミングで通知が来ることも!
実際にBeRealを使ってみての感想とApp Storeでのレビュー高評価
少しではありますが、実際に触ってみての感想は、Z世代よりもだいぶ歳を重ねてしまった私の感覚でも「面白そう!」でした。
BeRealのアカウント開設は非常にカンタンです。シンプルで洗練されたUIも、非常に優れていると感じます。アプリをインストールし、電話番号、名前、ユーザー名、誕生日などの情報を登録すればすぐに利用可能です。
スマートフォンの連絡先との連携も可能で、BeRealユーザーがいれば、そこからリクエストを送ることも可能です。
アカウントの開設が終わると、チュートリアルかのように通知が送られてきます。2分間のカウントダウンが始まり、はじめての投稿を要求されるわけです。
もちろん通知をスルーしても良いのですが、慣れないうちはかなり焦りますね…
一方でその焦りと緊張感が「楽しみ」に変わる感覚はなんとなく得られました。間違いなく日本でもユーザー数を増やし、人気SNSとなることでしょう。
いつ通知が来るかわからない緊張感により、”日常生活に張りが出る”という副次的効果も得られるかもしれない。。
App Storeのレビューもチェックしてみたのですが、こちらも驚きの☆4.7という高評価です。
あのInstagramでも☆4.6、Facebookなんて☆2.5ですからね。ユーザーが高く評価していることが伺えます。
BeRealのユーザー数、アプリのダウンロード数は?
この数字には驚きました。
私も仕事柄、たくさんのSNS、アプリを見てきました。一時的に話題となるが、キャズムを越えられず、消えていったSNSは数知れず。
しかしながら、BeRealは違います。
data.aiによると、BeRealの月間アクティブ ユーザー数は2022年7月の時点で、2,160 万人、デイリーのアクセス数は293万人を越えています。
最も人気のある米国では、2022年5月10日の時点で270万ダウンロードされています。フランスでは168万ダウンロード、イギリスでは151万ダウンロード、3国においてミリオン達成です。
2022年に入ってからの勢いは凄まじく、世界全体で見ると、1月~3月の第1四半期には330万ダウンロードに達し、2021年10月〜12月の第4四半期と比較すると390%の増加となっています。
ここから日本での人気爆発も十分期待できることでしょう。
BeRealの対応OS及び言語対応(日本語対応済)
iOS、Androidの双方に対応しています。
2019年末にリリースしたとは思えぬほどに多言語対応されており、既に日本語でも利用可能になっています。
現在の対応言語は以下の通り。
英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、日本語、韓国語、ポルトガル語
BeRealの注意点
BeRealは余裕を持って投稿することができる仕組みになっていない為、映り込みなどのリスクに注意を向けなくてはなりません。
2分という時間制限、カウントダウンされるアプリの演出。ユーザーが焦って投稿することで、個人情報やプライバシーの流出、著作権、肖像権などの侵害といったリスクに十分対応できない可能性があります。
これまで、私は講演等において、SNSのリスク管理について、「投稿前に一度立ち止まり、写ってはいけないものが写り込んでいないか、誰かを傷つけたり、自分を傷つけてしまうような写真ではないか、落ち着いて確認してから投稿しましょう」と伝えてきました。
BeRealは、とても面白いコンセプトであり、SNSの新風と言えるでしょう。私もこのSNSがどのように業界に影響を与えていくのかとても楽しみです。この旋風をポジティブに捉えています。
しかしながら、ユーザーは、これまでのSNS以上にリスクがあることをしっかり理解し、より注意して楽しむことが重要です。
まとめ
ディスカバリーという機能を使い、BeRealユーザーの投稿を見ていると、さまざまな日常が垣間見えて楽しいものです。
本当に何気ない日常を切り取ったものもあれば、おふざけに走る人、”盛れないSNSなのに映えちゃってる私”をバリバリアピールする人、カメラに手が被さり明らかに失敗している写真、そして奇跡の瞬間…
確かに突然の通知から展開される写真の数々は見ていて飽きません。
私自身も、せっかくアカウントを立ち上げましたし、楽しみながら使ってみようと思います。
きっと日本でも一定の人気を勝ち取ることでしょう。
気になる部分としては、Instagramがまたしても「通知から2分以内に投稿」をルールとする似たような機能を開発中とのこと。Snapchatが流行ればStoriesを出し、TikTokが流行ればReelsをリリース。あまり上品には見えません。
新しいSNSアプリが他に真似されず、独自の文化を作ることを楽しみにしています。
はじめての通知(ランダム)は22時過ぎでした。たまたまシガーバーで飲んでいたので、バーカウンターの小洒落た写真になり、ホッとしています。