INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜 第3回『18歳選挙権へ!主権者教育のやり方とは? 前編 NPO法人Rights副代表理事 西野偉彦さん』

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不定期連載「INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜」第3回(前編)

不定期連載『INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜』は、私、落合正和が「いま知りたいこと」を、その道の専門家や、有識者等にインタビューし、ここだけでしか聞くことのできない貴重な情報をお届けしてまいります。

第3回目となる今回は、第1回にもご登場頂いた、NPO法人Rights副代表理事 西野偉彦さん。

前回のインタビュー後、選挙権年齢が18歳へと引き下げられたことを受け、総務省と文部科学省が高校生向けの副教材を作成、発表されました。

いよいよ11月から配布が始まっているそうですが、その中身とは?

今回も、主権者教育の専門家である西野偉彦さんに、その副教材について伺ってみました。

西野偉彦

今回はロングインタビューのため、前編、後編2回に分けてお届けいたします。

 

西野偉彦さんプロフィール

1984年東京生まれ。明治学院大学法学部卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程在籍。(公財)松下政経塾政経研究所研究員。専門は、若者の政治リテラシーや社会参画意識を育む「主権者教育(シティズンシップ教育)」。2011年度、神奈川県立湘南台高校「シティズンシップ教育アドバイザー」として、授業プログラム「模擬議会」の立案に参画。2000年から18歳選挙権を推進してきたNPO法人Rights副代表理事として、海外での研究調査も実施。論文「18歳選挙権に伴う主権者教育に関する研究~ドイツの事例を参考にして~」で、第34回昭和池田賞を受賞。NHK、日本テレビ、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、共同通信、ロイター通信などメディア出演多数。現在、Yahoo!ニュース特集「世界に学ぶ18歳選挙権」に掲載中。

取材・講演等のお問い合わせは、office@rights.or.jp まで。

主権者教育の新副教材「私たちが拓く日本の未来」について

落合
ご無沙汰しております。前回の7月インタビューから約4ヶ月。西野さん、二度目のご登場です。今回も主権者教育についてお伺いしていこうと思いますが、いよいよ18歳選挙権の導入に伴う、主権者教育の副教材「私たちが拓く日本の未来」が配布されました。それについてかなりお怒りになられていると伺っていますが(笑)
西野
はい、怒っていますね(笑)
落合
それはこの副教材の内容について?
西野
一言でいうと”これじゃない感”と言いますかね。。。それというのも、2015年度も残り半年を切っているこの時期に、100ページにも及ぶ副教材が出たと言うこと。現場からするとカリキュラムが決まっている中でどこに入れ込むんだと。
西野
もちろん、この副教材の執筆者には現場の先生も入っていらっしゃいますが、私がこれまで関わってきた神奈川県立高校を含め、主権者教育にもともと積極的に取り組んでいる学校の先生ばかりで、これまであまり主権者教育に関わってこなかった先生たちの声がどこまで反映されているのか。
落合
だからこんなに分厚い副教材が出来てしまった?
西野
そうなんです。それに、中身には、『解説編』、『実践編』、『参考編』とあって、解説編では政治経済の教科書にも書いてあるようなことがずーっと書いてあるんですよね。我が国の人口ピラミットがどうだとか、投票率がどうこうだとか…。こんなに内容が詰め込まれていたら解説編をやるだけで、いったい何コマ必要なんだと(苦笑)
落合
100ページですか…私の感覚ですけど、高校生の時に政治経済の授業を受けていて、1コマで扱う教科書の範囲は、まぁ…5ページか6ページ。そんなもんじゃないかなと。二学期も終わりに近い今の時期からカリキュラムに入れてとなると、今回の副教材に入っている内容を、全て生徒に指導するのは不可能。そういうふうに思いますよね。
西野
その通りです。先生も生徒も困惑していると思います。
落合
さらに、受験シーズン真っ只中の高校3年生が、受験に関係ないこのテーマに、果たして真剣に取り組むのか?と考えてしまいます。
西野
おっしゃる通りです。この教育のメインターゲットになるのは、来年の夏に参議院選挙に行くことになる高校3年生です。しかし高校三年生に、この時期から100ページを教えるとなると、いやいやセンター試験が近いだろうと。
落合
それでは高校2年生はどうですか?
西野
もちろん、現在の高校2年生においても、参院選までに18歳の誕生日を迎えれば、選挙に行くことになります。そうは言っても、100ページの副教材を来年4月の授業から入れ込むとしても、この時期に出されているわけですからなかなか難しい。これはもう現場の声を十分に聞いていないのではないか?と思わざるを得ない。
落合
この副教材はいったいどの科目でやるんでしょう?政治経済ですか?
西野
政治経済の授業数ってそんなにたくさんありませんからね。受験前にこれだけやっているわけにもいかないですし。じゃあ他に総合的な学習の時間かというと、例えば修学旅行だとか、様々な行事や受験指導に使われる。じゃあどこでやるんだって言うことになると、下手をすると副教材を配って終わりという学校も結構あるんじゃないかという懸念もあります。
落合
う〜ん… 考えてみると、そうは言っても、もう来年の参院選までの日にちは変わらないわけであって、受験を控えた高校3年生というすごく忙しい世代がこれをやらなきゃいけない。ところが、この100ページの副教材が出来上がってしまっている。結構大問題なんじゃないかと言う気がしますよね。
西野
さらに問題なのは、中身です。副教材には、『模擬選挙』や『模擬議会』といった具体的なプログラムも紹介されています。私は現場で『模擬選挙』に取り組んだこともあるし、『模擬議会』に関しては、かつてアドバイザーとして神奈川県立高校で立案したものがモデルになっています。しかし、実際に取り組んできたからこそ分かるのは、『政治的なテーマを扱えば、高校生は政治的リテラシーを身に付けられる』というのは短絡的なのではないか、という疑問です。
西野
社会問題の背景や基礎知識を学ばないまま深い議論はできないし、選挙や議会のロールプレイをすればいいんじゃないかという考え方は、正直浅いんじゃないかなと。高校生が、政治とは何か?政治に参加するって自分たちにとってどんな意味があるのか、ということをきちんと考えられるプログラムが必要です。それは決して100ページもかけることではない。政治の上っ面だけ勉強するっていうことが、本当に政治的リテラシーを身に付けることになるのか、主権者になることなのかなって。
落合
私が今回の副教材について感じたのは、運転に例えるなら、筆記試験の教科書だけもらって、それを読み終えると同時に『じゃあ運転してください』って言われているような。教習所に通うこと無くね。そう感じます。
落合
副教材だけ渡されて、いきなり社会に放り込まれ、選挙という非常に重要な意思決定を求められる。これは高校生も可哀想ですよね。このままじゃそうなっちゃう。
西野
まさにおっしゃる通りです。さらに、車の運転においては教習所の教官は運転に詳しく教えることに慣れているわけですが、学校の先生の多くは、主権者教育の授業なんてこれまでほとんどやったことがないわけです。つまり、教える側も試行錯誤だし、教えられる側も『いや、受験勉強の時期なのに…』みたいに、この分厚い副教材がかえって現場の困惑を引き起こすことになっています。
西野
しかし、世の中は『いよいよ18歳選挙権!』ということで、先生や高校生が『この副教材は使いづらいんだよな』と声をあげにくい空気がある。しかし、実際これはどうしたもんだろうかと。副教材を使いたくないというところまではっきりとは言わないけど、政治的中立性も担保しなきゃならない。「どうしたらいいんだ??」という現場の“声なき声”は実はかなり多いと思います。

「社会的意思決定学習」とは?

落合
もう少し短時間で済んで、より実践的な教育の方法ってないんですかね??
西野
それを今回お伝えしたいんです!この副教材を批判をすることは簡単ですが、私のモットーはそれならどうすんだという対案を提示すること。それをしなければ、単なる評論家になってしまうし、主権者教育の実践者として意味がないですから。私はこの副教材に替わる、もしくはこれをやる前に、もう少し手軽に取り組めるプログラムを作ってみました。それが、この『社会的意思決定学習』なんです。
「社会的意思決定学習」

「社会的意思決定学習」

落合
こちらが、西野さんが作成された、主権者教育プログラムですか?
西野
はい。この『社会的意思決定学習』とは何かというと、逆転の発想なんですよ。政治の問題を考えるには、政治的なテーマを扱わないと出来ないわけじゃない。より高校生にとって身近な学校生活における問題から、政治を考えることができるのではないか、ということを投げかける授業なんです。
落合
なるほど。具体的には?
西野
『生徒会の全体予算を各部活に分配する際、どのような基準で分配すれば、最も多くの生徒が納得すると思うか』というテーマを掲げ、【A:活動実績】【B:部員の数】【C:一律同額】という3つの選択肢から1つを選ぶ模擬投票、グループ討論、ミニ立会演説、そして再び模擬投票を実施するプロセスを通じて、社会の意思決定である政治に参加する意義について、体験的に深く考えるものです。議論の際には、どの高校にもある『生徒会予算・決算表』を用いて、実際に予算がどのように分配されているかを見ながら、生徒が問題の“当事者”として参加できるようにしました。
落合
高校生にとって身近なテーマで模擬投票をやってみるんですね。
西野
はい。それでも、最初はあまり深く考えずに投票する生徒も多いと思うんです。なんとなくこれがいいかな〜?っと。しかしその後、自分で選んだ選択肢とは関係なく、各生徒をランダムに振り分けることがポイントです。そしてA、B、C、3人1グループで討論をする。
落合
なぜランダムに振り分けるんですか?
西野
例えば模擬投票の段階ではAに入れたとしても、グループ討論ではBを担当しなきゃいけない生徒も出てくる。そうすることで、さまざまな見方を身につけることが出来るようになります。また、ディスカッションをしていく中で、自分が模擬投票した選択肢を、別の人が担当することで、自分とは異なる視点で、その選択肢の説明を聞くことができたりします。その過程で、本当に最初に投票した選択肢でいいのか、考えることができるわけです。
落合
それは面白い。白熱しそうですね。
西野
そうなんです。グループ討論に限らず、ミニ立会演説なども踏まえると、最初の模擬投票ではなんとなく投票したけど、違う立場でじっくり考えると意見が変わることもある。そういったことを模擬的に経験する。
西野
しかも、これは最短で1コマでできる。もう少しゆっくりやっても2コマ。こういったものを考案して、実際に都内の複数の高校で実施しています。生徒の皆さんからは『政治は難しいし自分には関係ないと思っていたけど、生徒会の予算から考えられるとは思わなかった』『政治の見方が変わった。こんな授業ができるなんて驚いた』『最初グループ討論は嫌だなと思ったけど、面白くていつの間にかのめり込んでいた』という反応が返ってきています。
落合
ちなみに、なぜ『生徒会の予算の分配』がテーマなのでしょうか?
西野
これまでの日本の政治っていうのは右肩上がりの経済成長のなかで富の分配をしていた。しかし、今後は財源やエネルギー、消費税増税など『限られた資源をどう分配していくのか?』『負担をどう支えあっていくのか?』という時代に入ってきています。
西野
その中で重要なのは、どうすれば多くの国民に『限られた資源の分配や負担』について納得して受け入れてもらうのか、ということです。それを社会の意思決定として行うことこそ政治の役割だと私は思っています。この政治の役割を、高校生にとって身近なテーマで学習することが出来るプログラムが『社会的意思決定学習』なんです。実際の選挙でも、限られた資源や負担の分配というテーマは主要な争点になってきますから、この問題を生徒たちが“自分事”として考えることができるテーマが『生徒会予算』ではないかというわけです。他にも、『校庭(体育館)の使い方』や『そうじ当番の決め方』など、学校生活には同様のテーマが溢れていると思います。
落合
身近な問題をテーマに挙げることで生徒も興味を持つでしょうし、1コマでできるのは魅力ですね。
西野
そのとおりです!先生方からも『これはアクティブラーニングでもある主権者教育。やってみて良かった』『今までにない新しい授業のやり方を経験できたことが勉強になった』『日常の授業ではなかなか見られない生徒の意外な一面がたくさんあった』などの声が多く、おかげさまで好評をいただいています。
落合
いずれにしてもそういった形で主権者教育を行えば、自分事として捉えることが出来て、その上多くて2コマで終わるっていうのは実践的ですね。また、こういう授業ってすごく印象的に記憶に残りますよね。普通の授業と全く違う事をやるので。おそらく教科書の読んでノートに書いて…といういつもの授業パターンだと、受験を目前に控えた学生は、先生が話している陰で受験勉強始めますよ(笑)来年には参院選は行われるわけですから、主権者教育をやるならこのように現実的なプログラムであるべきだと感じます。
西野
今から副教材にある知識を詰め込むのはどだい無理な話です。指導方法だけでなく授業時間としても厳しい。だから、私のプログラムには、『知識の暗記学習』っていうのはほとんど入っていません。その分、『当事者として、有権者として、意思決定である政治に関わっていくフレームワーク』を学ぶのがコンセプトです。模擬投票とか、グループ討論をやっていくという一連の流れは、実際の選挙にも大いに役に立っていくだろうと。
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海外における主権者教育とは?

落合
日本では、今回18歳選挙権の実施によって、ようやく主権者教育を導入することになったわけですが、海外はもっと積極的に教育を行っているところもあるわけじゃないですか。そういった国々では、どのような教育を行っているんでしょうか?
西野
いいご指摘です!今お話ししようと思ってました(笑)以前の『INTERVIEW』の中では、ドイツの事例を出しましたけど、ヨーロッパ全体、アメリカもそうですが、基本的には小さな頃から政治について学んでいます。でも、小学生にいきなり『政治を考えましょう!』と言っても実感が湧かないので、やはり身近な問題の中から『政治とは何なのか』について段々と学んでいく。ドイツではそれを”STEP BY STEP APPROACH”と呼んでいて、『社会的意思決定学習』のプログラムを作る上でも参考にしています。
西野
日本の主権者教育の問題点は、『18歳以上に選挙権が与えられた。だから、高校生には政治的テーマについて議論させれば、政治に関心を持ち、知識も身に付くと思っている』ということ。
落合
そんな単純なものじゃないですよね。
西野
本当はもっと幼い頃からごく身近な問題から関心を持たせて、社会に接続していく。それが、本当に身に付く主権者教育の流れだと思うんですよね。ですから、アメリカ、ドイツ、イギリスなどでは、ジュニア選挙なんかもやっています。教材なども、『公園にはどんな遊具が必要だと思いますか?』あるいは『学校の校庭をどうデザインすればいいですか?』など、子どもたちの身近な問題をテーマにしています。そういったところから、社会につながっていく。私は、今まで日本には十分ではなかった、もっと本質的な主権者教育の取り組み方を求めていきたいなと思っています。
落合
西野さんのプログラムですが、教材はあるんですか?
西野
あります!先生方の負担を軽減するために、オリジナル教材(ワークブック&事前事後プリント)、詳細な授業計画も作っています。さらに、先生に実施していただくパターンと私がゲストとして実施するパターンの2ケースを用意するなど、学校側のニーズに最大限応えられるように準備しています。プログラムにご関心がある高校や先生、生徒の方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡下さい!

後編につづく→

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