INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜 第一回『主権者教育と18歳選挙権 NPO法人Rights副代表理事 西野偉彦さん』

不定期連載「INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜」はじめます!

新連載『INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜』は、私、落合正和が「いま知りたいこと」を、その道の専門家や、有識者等にインタビューし、ここだけでしか聞くことのできない貴重な情報をお届けしてまいります。

記念すべき第1回は、NPO法人Rights副代表理事 西野偉彦さん。

18歳以上に選挙権を与える改正公職選挙法が、今年6月17日に成立。

来夏の参院選では18、19歳の未成年者が初めて投票権を持ち、若者の政治参加が期待できます。

そうなると必要になってくるのが、有権者としての自覚を養う「主権者教育」

今回は、その「主権者教育」について、西野偉彦さんに伺ってみました。

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西野偉彦さんプロフィール

1984年東京生まれ。明治学院大学法学部卒。(公財)松下政経塾修了。
国内外の教育現場を訪問し、若者の政治的リテラシーや社会参画意識を育む「シティズンシップ教育(主権者教育)」を研究・実践。2011年度、神奈川県立湘南台高校シティズンシップ教育アドバイザーとして、授業プログラム「模擬議会」を立案。
現在、民間シンクタンクに勤務する傍ら、 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に在籍。2000年に結成され、「18歳選挙権」の実現を推進してきたNPO法人Rightsの副代表理事を兼任。2015年6月、論文「18歳選挙権に伴う主権者教育に関する研究~ドイツの事例を参考にして~」で、「第34回 昭和池田賞」(後援:文部科学省)を受賞。
NHK、日本テレビ、TBS、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、ロイター通信等に出演・掲載。

“主権者教育”とは何か?その言葉の意味は?

落合
それでは早速… よろしくお願いいたします。
西野氏
よろしくお願いいたします。
落合
まず、”主権者教育”という言葉そのものが、一般的には馴染みが薄い言葉だと思います。時にはシティズンシップ教育とも呼ばれたり…。その言葉の定義も一般の人はよくわかりません。そもそも”主権者教育”って、いったいどういう意味なんでしょう?
西野氏
いま一番話題になっているのは、来年の参議院選挙で18、19歳が投票に行くわけですが、現状、投票率が低い。それを上げていかなくてはならないので、主権者教育をやる!という文脈なんですが、それは即ち、選挙に行かせるための教育なんだって言ういい方をしていて、それは大きな間違いであると、私は思っています。
落合
主権者教育=選挙に行かせる教育…では無いということですね。
西野氏
はい。”主権者教育”というのは、日常的に社会や政治に関心を持ち、社会の中でモノゴトを決めていく、意思決定に関わっていくプロセスに必要な能力や知識を養っていく教育を”主権者教育”と、本来言うべきなんです。それを諸外国はやっているし、日本も目指さなくてはなりません。
落合
“主権者教育”は、投票に行かせるための教育ではなく、社会に参加するための教育という考え方であるべきと。
西野氏
そうですね。

“主権者教育”は政治的中立を保てるのか?

落合
“主権者教育”は主に高等学校を舞台に行われていくと思うのですが、教育者の意のままに若者が操られる危険性も感じます。政治的中立は保てるのでしょうか?ニュースを見ると、政治的中立違反の教諭に罰則を!という提言もあるようですが…参院選まで、来年の夏まで実質1年しかない中で対策はどうなっているのでしょう?
西野氏
中立って何か?という議論になるんですが…難しいことは置いておいたとしても、主権者教育の肝心なところは
「争点学習」なんです。何が世の中で問題になっていて、それにはどういった意見があるのか、賛成もあれば反対もある。一部賛成ということもある。この”争点”を学校の中で学んでいくことが大事なんです。
落合
争点学習とは?
西野氏
例えば原発という問題に対し、反対意見だけを教える。反対政党を支持することだけを教える。これは中立性を欠きますからダメです。そうではなくて、原発という問題を巡って各党がどういった主張を出しているか?全ての政党の考えを出していき、その判断は生徒に委ねる。判断の基準は先生が出してはいけない。これが中立性を保った教育ですね。

 

ドイツの首都、ベルリンの行政区、パンコウ区で行われている政治教育とは?

落合
なるほど。ドイツでは非常に先進的な政治教育があると聞いています。ジュニア選挙(中学1年生以上を対象にした模擬選挙)なんかも行われていますよね。西野さんはドイツにも視察に行かれていると聞きました。ドイツではどのような”主権者教育”が行われているのでしょうか?
西野氏
ドイツは他の国々と異なっていて、非常に特徴的なのは、「連邦政治教育センター」というのを作っています。「連邦政治教育センター」は、その時々の政権の考えに左右されないように配慮しながら、中立性の高い教材を作って、各学校に配布しています。戦後70年間、国を挙げて中立に配慮して教材を作っています。
落合
それはいいですね。
西野氏
また、ドイツで印象に残っているのは、”STEP BY STEP APPROACH”という言葉です。日本の主権者教育は高校生になったらやろう!という話です。ここがドイツとの決定的違いで、ドイツでは小さな頃から身近な社会のテーマについて関心を持って、徐々に政治的なテーマにも関心を深めていくという取り組みを、州や自治体で行っています。
落合
具体的にはどんな取り組みなんですか?
西野氏
例を挙げると、ドイツにはパンコウ区という37万人が住む行政区があるのですが、そこでは小学生の子供たちが、自分たちで遊ぶ遊具を学校の校庭や、公園などに設置するために、3人〜5人で1チームをつくり、子供たち自ら企画書を区に提出するんです。その後審査を経て、多数のチームから提出された企画書のうち、どれが採用されるかが決まるのですが…
落合
凄いな…日本の子供たちは、社会的な問題について興味を持つ機会すら無いように感じます。少なくとも私が小学生の時は児童会(生徒会)ですら自発的に意見を述べることなんてできませんでした。全部先生が決めてたような。。。ドイツは子供たちが自ら…凄いなぁ。。。
西野氏
そうなんです。しかも、それだけではありません。ドイツでは、なんと企画書を提出するのが小学生ならば、それを審査する側も小学生なんです。
落合
おおぉっ!
西野氏
もちろんそこには区の職員も立ち会うわけですが、まちづくりに小学生も参画させているんですね。
西野氏
限られた区の予算を考慮し、なぜそれが必要なのか?他のチームの企画と比べ、どちらのほうが町のためになるのか?を小学生が自ら考える取り組みがなされています。企画を出すだけでなく、チームの中から1名は代表として審査する側にも回り、予算と企画を照らし合わせ、意思決定しなくてはならない。だから先進的なんです。
西野氏
イギリスの政治学者のバーナード・クリックは、政治というのは「相異なる利益の創造的な調停」と言っています。つまり、あっちを立てればこっちは立たずという板ばさみの中で、小学生という子供の段階から、全体の利益や、代表する自分のチームの利益を考えなくてはならない。こういった取り組みだからこそ意義があるわけです。
落合
小学生という時期にしては随分と重いモノを背負わされますね(笑)
西野氏
そうなんです。重いことやるから意義があるのです。
落合
それは日本にも取り入れてほしいなぁ。
西野氏
日本はまず高校からなんですよね。

日本の主権者教育で使われる教材は?”主権者教育”の入る科目は?

落合
日本の主権者教育で使われる教材はもう出来上がっているんですか?
西野氏
そもそも教育基本法の中に”主権者教育”という言葉が載っていないので、新しく定義を作らなくてはいけません。と、いうことから、現在は文科省と総務省が共同で「副教材」の形で製作しています。これは年内に配布される予定です。
西野氏
中身の軸としては模擬投票が全国的に展開されていきます。その他に、「模擬議会」など、私が関わってきたプログラムも反映されるようですね。
落合
それは凄い。
西野氏
また、”主権者教育”というのは高校教育の中のどこに位置するのか?政治経済なのか、現代社会なのか、総合的な学習なのか、現在はよくわからない位置付けのため、2020年度あたりから、新しい科目「公共」というのが導入されます。
西野氏
「公共」は、政治経済や現代社会を再編した科目で、そこに”主権者教育”の要素が入ってくる。それまでの暫定措置として、今の副教材を作っている…といったところです。
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学校教育において、”主権者教育”はなぜこれまで導入されて来なかったのか?

落合
副教材は年内に配布とのことですが、そうなると、もう次の参院選まで1年も無い状況です。なぜ、もっと早くから”主権者教育”が導入されなかったのでしょうか?
西野氏
そもそも”主権者教育”に近い言葉で”政治教育”というのがあります。”政治教育”は改正教育基本法の第14条にも、盛り込まれており、そこには「政治的教養は、教育上尊重しなくてはならない」と書いてあるんですけども、第2項には、特定の政党を支持、反対してはいけない、つまり政治的中立が書かれています。
西野氏
この第2項が過度に重視されてしまってきた結果、”主権者教育”の導入が遅れてしまったんです。
西野氏
本来は、第2項の政治的中立は、政治的教養を推進していくために必要なポイントだとして定められていたのですが、安保闘争、学生運動が巻き起こるなかで、その動きが高校に波及しないように、1968年通知という事実上、高校生の政治運動を禁止する通知が文科省から出されました。もともとは政治的教養を推進していく上で必要な政治的中立が、結果的には教育から政治的教養を遠ざけるように作用してしまいました。
落合
なるほど…
西野氏
私自身、”主権者教育”に関わるプログラムをすすめてきた中で、学校側から「こういったものはそぐわないからやめてほしい」と言われたことはたくさんあります。
落合
苦労されてますね!
西野氏
今回の18歳選挙権の成立を契機に、今後、主権者教育が広く現場で取り入れられていきます。これからも、日本の主権者教育の充実と研究に、より一層尽力していきたいと思っています。
落合
応援しております!

まとめ

今回はNPO法人Rights副代表理事 西野偉彦さんにお話を伺いました。

ドイツにおける小学生の社会参画や、これまで主権者教育が導入されてこなかった理由などは、私にとってちょっと驚きの事実でした。

西野偉彦さんには、実際に学校現場で主権者教育が開始された後に、またお話を伺おうと思っております。

ぜひお楽しみに!

新連載『INTERVIEW 〜いま知りたい!を聞く〜』いかがでしょうか?

今後もさまざまな分野の専門家、著名人などにお話を伺って参ります。

ご期待ください。

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ABOUTこの記事をかいた人

落合正和

マーケティング・コンサルタント&Webメディア評論家&ブロガー 2010年よりソーシャルメディアマーケティングに注目し、現在はオフラインでの商圏分析とソーシャルメディアマーケティングを融合したナレッジをベースに、企業や政治家、プロスポーツ選手といった方々へのコンサルティング活動、講演活動を行っています。 著書:はじめてのFacebook入門【決定版】(秀和システム)