インターネットにおける「自由」と「規制」の狭間 〜国家や行政が私企業に責任を押し付けるのであれば業界の未来は無い〜

20世紀〜21世紀最大の発明インターネットにおける「自由」と「規制」その現状とは?

この20年ほどの間で最も世界に浸透普及したモノはインターネットでしょう。

近年では、インターネットほど世界に大きな影響、変化を与えた存在はありません。

それに加えて、スマートフォンを中心としたモバイル端末の出現により、情報伝達の形は完全に姿を変え、世の中の価値観も大きく変わっていきました。

インターネットにおける自由な情報の流通は、現代人から大きな支持を得て世界中に広まり、その多様な便宜性は、今や人類には欠かせないインフラにもなっています。

ところが今、インターネットの価値観の中心に位置する「自由」に対し、国家や企業の影響のもと、さまざまな変化、歪みが生じています。

今回は、インターネットにおける「自由」と「規制」について考えていきましょう。

インターネット上の「自由」は、徐々に規制が強まっていく

昨日はAbemaPrime(月曜 ウーマンラッシュアワー村本さんMC)にスタジオ生出演。

今回で3度目の出演となりました。

https://youtu.be/S7c0Vy-cD1g?t=9m42s

動画は前回出演時のものですが…

番組ではイギリスの大手新聞・ガーディアン社が報じた「Facebookの検閲基準が流出」というニュースをテーマに、インターネットと自由についてさまざまにお話して参りました。

2016年はアメリカ大統領選挙などもあり、Facebook社はフェイクニュース、検閲、偏見、ヘイトコンテンツ等について、特に多くの批判を受けた1年だったでしょう。

そんな中で今回の、検閲基準流出(ごく一部のみの流出かと思いますが)。

Facebook側にとっても大きな痛手だったのではないでしょうか。

SNSの検閲、そしてFacebookにおける検閲基準をどうとらえるか?

いまやインフラとなってしまったインターネット、そしてSNSなどの投稿は、小さな子供を含め、誰の目にも触れる可能性があり、一定の検閲は止むを得ないと私は考えます。

これは、テレビ、ラジオにおいても普及や文化の浸透につれ規制が高まっていったのと同じこと。

メディアの移り変わりが起きている現代では避けられない事象です。

暴力 、ヘイトコンテンツ、恐怖、ポルノ、人種差別などへの捉え方は、文化や習慣、歴史認識、宗教観などによって大きく異なります。

今回、Facebook社から流出したとされる検閲基準についても同様で、

「なぜコレは良くて、アレはダメなの?」
「どういう判断で決めてるんだ?」
「意味がわからない!」

など、ネット上でもさまざまな意見が交わされていました。

また、検閲基準の流出は一歩間違えれば『情報操作、印象操作の証拠だ!』というようにも捉えられかねません。

だからこそ、こういった内々で定めた検閲基準の情報流出は批判の対象ともなりやすく、Facebook社にとって大きな痛手なのです。

Facebookが定めていた検閲基準の正悪はだれにも判断できませんが、十数年のFacebook社の経験の積み重ねと多大なコストの上に成り立っていたものでしょう。

Facebook社も当然、言論の自由とプラットフォームを提供する責任の狭間で、悩みに悩んだ末設けた基準だろうと思います。

世界共通の基準、誰もが納得する基準、を設けることは確実に不可能であることは明白です。

それでも、理想に近づけようと、モデレーター(目視による検閲を行うスタッフ)の数を4,500人から7,000人に増強すると発表するなど、Facebook社の努力は賞賛に値するものだと私は考えています。

モデレーター(目視による検閲を行うスタッフ)の動員とその効果とは?

Facebookに限られたことでは無く、今はSNS全体において、ライブ配信を含め、動画投稿の割合が急増しています。

動画投稿はテキスト投稿と異なり、アルゴリズムによる算出やAI(人工知能)の活用で、不適切コンテンツをハジくことが技術的にまだ難しい。

そのような背景を見れば、モデレーターの増員は止むを得ずといったところでしょう。

しかしながら、現在のFacebookの月間アクティブユーザーの数は約20億人です。

これまでのFacebookの実績を考えれば、ユーザー数はまだまだ伸びることも予想されます。

膨大なユーザーが発信するコンテンツのすべて、ましてや、次の瞬間なにが起きるかもわからないライブ配信投稿等の全てチェックすることは、増員された7,000名体制でも到底不可能の話です。

通報されたコンテンツにできるだけ早く反応する…

といったあたりが限界でしょう。

モデレーター増員による検閲クオリティの向上は期待できますが、完璧に近い検閲を企業側に求めるのは酷な話です。

インターネット上の投稿の責任を私企業に全て押し付けることによる弊害

Facebookは公の機関ではありません。

あくまでも私企業が商売をする上でプラットフォームを解放しているのであり、本来はすべてのコンテンツを検閲するほどの責任を負わなくてはならない立場では無いように私は感じます。

それに反して、いくつかの国はプラットフォーム側に責任を押し付けようとする傾向にあります。

例えばドイツは、ヘイトクライムや違法なフェイクニュースが投稿された場合、24時間以内に削除しないとプラットフォームを提供する企業に対し、約60億円もの罰金を課すという法案を閣議決定し、法制化を進めています。

ドイツにおける罰金法案については、こちらの記事で詳しく触れています⇒フェイクニュースとは何か?ソーシャルメディアばかりが悪者にされる風潮に違和感を感じる

フランスでもオランド大統領が「差別表現がネット上で拡散されるとき、Google、Facebook、Amazonなどウェブ大企業は共謀者である」と発言。企業側に責任を求める法制化を進めています。

こういった様子を見ていると、どうにも権力者はインターネットという新しいツールを、本質的には嫌っているようにも感じてしまいます。

そんな厳しいレベルの責任を私企業に押し付けるのであれば、この業界に新規参入しようという企業は減少し、イノベーションが生まれなくなってしまいます。

既にプラットフォームを提供している企業が、条件の厳しい国からの撤退を考えてもおかしくありません。

私がマーク・ザッカーバーグの立場ならドイツ、フランスで法制化された段階で撤退します。

モデレーター増員の件も、Facebook社ほどの体力があるからこそ可能なわけで、仮に同じクオリティを現在厳しい状況下にあるTwitter社に求めてしまえば、窮地に追い込まれてしまうでしょう。

規制を強化することで業界が弱体化してしまうようでは本末転倒。

本来、投稿したコンテンツの責任はユーザーが負うべきものではないでしょうか。

私企業、プラットフォーム提供者に規制を設けるよりも、ネットリテラシー教育を勧めることのほうが重要

規制、罰則で企業を締めつけても、実際にヘイトクライムや違法なフェイクニュースを発信するユーザーは痛くもかゆくもありません。

そんなネガティブな方向で法制化を進めるよりも、

・ユーザーへのネットリテラシー教育
・ヘイトコンテンツが生まれない健全な場作りのサポート

そういったことに力を入れていったほうが、世の中は良くなるのではないでしょうか。

例えば、

・義務教育の中でネットリテラシー教育を実施する
・検閲にかかるコストへの助成金を出す
・企業と対立するのでは無く、協働で犯罪アカウントへの対処をする

こういった解決策のほうが、企業をいじめ抜くよりもよっぽど効果があるでしょう。

インターネットが電気、ガス、水道と同様のインフラとなった今、国や行政が責任逃れし、一方的に企業に責任を押し付けているドイツ、フランスの事例には、私は猛反対です。

まとめ

先ほどのドイツ、フランスの事例を見ればわかるように、企業側に責任を押し付けている限り、インターネットの規制強化の流れは止められないですし、「自由」も失われていくでしょう。

罰則が強化され、利益が失われるのであれば、民間企業は撤退するしかありません。

時間のかかるネットリテラシー教育をコツコツ進めるよりも、規制をするほうが楽でしょうから。

人類は文化や宗教観の違いによる争いを、これまで克服したことはありません。

この問題は人類が存在する限り、永遠に解決できないかもしれません。

そんな中でも懸命な努力を続けるFacebook社。

臭いものにフタをすれば良いと規制、罰則だけを強化しようとするドイツ、フランス。

本当に解決(に近づく)するのであれば、

・ユーザーへの教育
・ユーザーへの責任

を求めるべきではないでしょうか?

企業やプラットフォームを規制しても、テロや犯罪は無くならないのでは?

私はそう感じています。

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落合正和
株式会社officeZERO−STYLE代表取締役
一般財団法人モバイルスマートタウン推進財団 副理事長兼専務理事
マーケティング・コンサルタント&Webメディア評論家&ブロガー
ブログやSNSを中心としたWebメディアが専門。ネット事件やサイバー事件、IT業界情勢、インバウンド観光などの解説で、メディア出演多数。 ブログやSNSの活用法や集客術、SEO、リスク管理等の講演のほか、民間シンクタンクにて調査・研究なども行う。 著書: 会社のSNS担当になったらはじめに読む本(すばる舎) ビジネスを加速させる 専門家ブログ制作・運用の教科書(つた書房) はじめてのFacebook入門[決定版](秀和システム)