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インフルエンサーマーケティングの台頭とメガインフルエンサーの役割
近年、インフルエンサーマーケティングは業界として大きく成長し、消費者行動に大きな影響を与える力を持つようになりました。市場は2016年の17億ドルから2020年には97億ドルに成長しました。2021年には138億ドルまで急上昇しており、着実な成長を示しています。2023年には、市場は211 億ドル規模の産業に拡大すると予想されています。(Influencer Marketing hub The Influencer Marketing Benchmark Report 2023より)
伝統的な広告手法に対する消費者の信頼性の低下やデジタルマーケティングの急速な進展により、企業は新たな方法で消費者に接触することを求められてきました。要するにありきたりの広告はもうお腹いっぱいで、信頼できる人の口コミこそが購買意欲を掻き立てる!という状況ですね。その答えの一つが「インフルエンサーマーケティング」であり、特にソーシャルメディア上の「メガインフルエンサー」の存在が、この新たなマーケティング形式を牽引しています。
メガインフルエンサーとは、何百万という大量のフォロワーを抱える著名人や人気者のことで、彼らはその影響力を使って大衆の意識や消費行動に大きな影響を与えます。彼らの投稿一つで、新製品の認知度を一夜にして高めることが可能であり、その影響力は広告業界において新たな地平を切り開きました。ヒカキンのみそきんが一瞬で売り切れるのもその効果です。あれは彼自身の商品ではありますが。
しかし、そのインフルエンサー力はそれ相応のコストが伴います。メガインフルエンサーがスポンサーコンテンツに高額な料金を要求するのは当然のこと。一度に何百万ものフォロワーに企業メッセージを届ける能力は、大量の広告費を投じても達成できないマスメディア広告を凌駕することもあります。
メガインフルエンサーの影響力は、そのフォロワー数の多さだけでなく、彼らの社会的地位や専門性、パーソナリティに由来しています。これらの要素はフォロワーに対して強い信頼性と説得力を与え、消費者が企業や製品に対してポジティブな行動をとる確率を高めます。
これらの要素から見ても、インフルエンサーマーケティング、特にメガインフルエンサーとのコラボレーションは、広告戦略の一部として非常に価値のあるものとなっています
しかし、メガインフルエンサーの影響力は刃物のようなもので、持ち方によっては自分自身に傷を負わせる可能性もあります。メガインフルエンサーがスキャンダルを巻き起こしたり、フォロワーを怒らせる行動をとった場合、それは企業に対して直接的な影響を及ぼします。企業の信頼性や信憑性に損ないが生じ、結果として負のROIをもたらす可能性があります。
さらに、メガインフルエンサーとのパートナーシップには他の課題もあります。高額なコスト、非活動的なフォロワーや偽のフォロワーの問題、キャンペーン参加への厳しいガイドラインなど、一筋縄ではいかない面が存在します。
YouTuberがワークマンの役員に抜擢!「サリーチャンネル」サリー氏(本名・濱屋理沙氏) マイクロインフルエンサーとナノインフルエンサーの台頭
一方で、近年ではマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーと呼ばれる小規模なインフルエンサーの存在も見逃せません。彼らはメガインフルエンサーに比べてフォロワー数は少ないですが、その影響力や効果は決して小さくありません。
マイクロインフルエンサーとは、一般的に数千から数万のフォロワーを持つインフルエンサーのことを指し、特定の分野に精通した人々が多く見られます。一方、ナノインフルエンサーはさらに規模が小さく、通常は数百から数千のフォロワーを持ちますが、彼らは特に狭い範囲または地域に大きな影響力を持つことがあります。
これらの小規模なインフルエンサーの台頭は、インフルエンサーマーケティングの新たな波とも言えます。なぜなら、彼らは一部のオーディエンスに対して非常にパーソナライズされ、カスタマイズされたアプローチを提供でき、その影響力はメガインフルエンサー以上に強力であることが多いからです。要するに濃いファンを抱えている。
マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーは、より深いレベルでフォロワーとつながり、その信頼とロイヤリティを得ています。彼らは自分自身の体験や専門知識を通じて、企業や製品の信頼性を高めることができます。そして、それは結果として高いエンゲージメント率となり、企業にとっては高いコンバージョン率や再購入率をもたらす可能性があるのです。
これらの小規模なインフルエンサーとパートナーシップを結ぶことは、企業にとって有益な戦略となることが増えてきました。それは費用対効果が高く、信頼性と高いエンゲージメントを約束するからです。さらに、彼らはある特定のコミュニティーに深く根ざしているため、そのコミュニティーの信頼を勝ち取ることができます。これらの要素は、消費者が企業を信頼し、購入を決定する上で重要な要素となります。
日本においても、YouTubeチャンネル「サリーチャンネル」で、約4.4万人の登録者を抱えるサリー氏(本名・濱屋理沙氏)を、社外取締役候補者にするとワークマンが発表しました。6月下旬に開かれる株主総会での承認を経て、ワークマンの社外取締役に就任する予定です。まさに彼女はニッチに特化したマイクロインフルエンサー。
消費者代表であり、広報でもあり、役員でもある。素敵な人事だと思います。今後、このような事例はどんどん増えていくでしょう。
マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーの台頭は、新たなマーケティングのパラダイムを提示しています。彼らの影響力を活用することで、企業はより効果的に顧客とつながり、その信頼とロイヤルティを獲得することができるでしょう。
マイクロインフルエンサーとのパートナーシップのメリット
ここでは、マイクロインフルエンサーとパートナーシップを組むメリットについて見ていきましょう。
まず最初に、マイクロインフルエンサーはコミュニティーと非常に強い絆を持っています。彼らは特定のテーマやトピックに特化して活動し、その分野において深い知識と情熱を持つ人々が多いです。(実際に私も200名弱のコミュニティを2つ、3000名ほどのコミュニティを1つ持っています。非常に関係性が深く、友人のようにお付き合いさせて頂いております)
それにより、フォロワーはマイクロインフルエンサーの意見や推奨を信頼し、価値があると感じるのです。そのため、彼らが推奨する製品やサービスは、フォロワーにとっても価値があると感じやすいです。
次に、マイクロインフルエンサーの費用対効果はとても高いです。大きなインフルエンサーに比べると、彼らとのパートナーシップはそんなに高くつきません。でも、彼らが企業に与える影響力は大きなインフルエンサーに匹敵します。そのため、企業は少ない投資で大きなリターンを得ることができます。
そして、マイクロインフルエンサーは彼ら自身がコンテンツの作成に関与し、自分たちのフォロワーに合わせたメッセージを作り出すことができます。これは、企業がターゲットとする人々に対してよりパーソナライズされた、またはカスタマイズされたメッセージを伝えることができるという意味です。これは、消費者が企業と製品に対してより深く関与し、興味を持つ可能性を高めます。
以上のように、マイクロインフルエンサーとのパートナーシップは、多くのメリットを持っています。企業がより多くの人々に効果的にメッセージを伝えるためには、この新しいインフルエンサーの力を利用することを考えてみるべきだと私は考えます。
まとめ 〜マイクロインフルエンサーの価値〜
NEAL SCHAFFERによるとマーケティング担当者の 93% がキャンペーンでインフルエンサーマーケティングを使用したことがあると回答しており、いまや企業にとって大変重要な広告戦略と言えるでしょう。
インフルエンサーマーケティングの戦略において、マイクロインフルエンサーは無視できない存在となっています。その個別のアプローチと信頼性、そして費用対効果の高さから、企業の成長と成功に対する彼らの寄与は計り知れません。
マイクロインフルエンサーの到来は、マーケティングの新しい時代と言えるでしょう。彼らとのパートナーシップを通じて、企業は新しい顧客層を獲得し、信頼性を高めることができます。また、そのリスク管理もメガインフルエンサーに比べ容易で、ROIも期待できます。これがマイクロインフルエンサーの本当の価値であり、その存在がますます重要になってくる理由です。
KOL(Key Opinion Leader)は中国のSNS上で影響力の高いアカウント、いわゆるインフルエンサーのことを指します。彼らは絶大な影響力を持つ一方で、フォロワーを水増しして影響力があるように見せたアカウントや、偽インフルエンサーアカウント(水軍)に騙された日本企業は数知れず。多額の資金を投入して、効果はまるで無しなんてことも多々起きていました。