フェイクニュースとは何か?ソーシャルメディアばかりが悪者にされる風潮に違和感を感じる

フェイクニュースとは何か?フェイクニュースの定義とは? 

2016年に行われたアメリカ合衆国大統領選挙、同年のイギリス、EU離脱の是非を問う国民投票あたりからよく聞かれるようになった

『フェイクニュース(Fake News)』

という言葉。

テレビや新聞、インターネットメディアでも頻繁に見かけるようになった。このキーワードの露出が広がった最初の要因は、トランプ大統領とその支持者たちが多用したことがきっかけと言って間違いないだろう。

ところで、この『フェイクニュース(Fake News)』とはいったい何を指すのだろうか?

単純に考えれば、虚偽の情報でつくられたニュースのことだろうが、一応辞書を引いてみよう。

辞典・百科事典の検索サービス『Weblio辞書』で調べると以下のような記述になっている。

フェイクニュースとは、事実ではない、虚偽・デタラメな内容の情報・報道の総称である。読み手が真に受けて(事実として受け取り)、ソーシャルメディアなどを通じて広く拡散され、時には世論を動かしたり社会的な混乱を招いたりすることもある。
※出典 Weblio辞書

Weblioは、複数の辞書や用語集を同時に検索ができる統合型オンライン辞書サービス。辞書の提供元は超大手企業から、地方公共団体・公営企業、国立国会図書館から、首相官邸を含むさまざまな官庁などなど、信頼度の高い辞書と言っても良いだろう。

『フェイクニュース(Fake News)』の定義として考えるに値するものだと言える。

この表現なら納得できる。

しかしながら、どうもマスメディアの報道で使われている『フェイクニュース(Fake News)』という言葉は、”ソーシャルメディアが生み出した嘘の情報”という印象のもと、報道されているようにしか感じないのである。

まるでソーシャルメディアがフェイクニュースを生み出す悪の根元のように言われる風潮に違和感を感じる

このキーワードが頻出する要因にもなったアメリカ大統領選挙時には、

・ヒラリー・クリントン氏がイスラム過激派組織に武器を売った
・オノ・ヨーコが「ヒラリー・クリントン氏と性的関係を持った」と告白した
・ローマ法王がドナルド・トランプ氏支持を表明した

などという事実無根の内容のニュースがソーシャルメディア上(だけでは無いのだけれど)を駆け巡った。まぁそれは事実。

一部のマスコミやネット嫌いなオジサンたち(全員とは言わないけど、団塊世代のネットへの拒絶感は半端じゃないように感じる)は、チャンスとばかりに

『ほら見たことか!ネットなんか信用できない!』

と嬉しそうに叫んでいる。(繰り返すが、私の近くにそういう人が実在するから、私にはそう聞こえるだけ)

まるで世の風潮は、『インターネット』『ソーシャルメディア』がフェイクニュースを生み出す悪の根元だと言わんばかりである。

現代病のようにソーシャルメディアの存在が叩かれている。

マスメディアの報道姿勢も、『自分たちのニュースには一切誤りは無く、悪いのはソーシャルメディア』と感じられるような”雰囲気”で放送し、テレビ大好き団塊世代を煽っているようにも感じる。

印象操作というかなんというか…

そんな状況に大きな違和感を覚える。

なぜならフェイクニュースはインターネット普及以前から存在するし、そもそもフェイクの発信元がマスメディアであった事例も多々存在しているからだ。

そもそも、この言葉を世界的に流行させた当人であるトランプ大統領が批判したのはCNNであり、ソーシャルメディア上のコンテンツではなかったのだけれど…

選挙戦の勝利後、トランプ大統領は記者会見でCNNの質問を拒否し、「You are fake news」と言い放った。

なぜこうにもソーシャルメディアへの批判が多いのか?インターネットやソーシャルメディアそのものは何も悪くない。それはただの道具でしかない。

確かにフェイクニュースは問題だ。

ユーザー自らがネットリテラシーをしっかりと身につけ、溢れる情報の中から必要なものを判断し、取捨選択しなくてはいけない時代になったのは間違いない。

ソーシャルメディアの普及によって、誰でもカンタンに手軽に虚偽の情報を発信できる時代になったことも事実だ。

正しい情報は自分で判断するしかない。

しかしながら、それはインターネットやソーシャルメディアの普及により生じた側面でしかない。

世間ではソーシャルメディアそのものを『悪』とするような印象操作や動きが見え隠れするが、ソーシャルメディアはただの情報伝達の道具だ。

・クルマが無かった時代には交通事故は無かったし
・電話が無い時代にオレオレ詐欺は無い

あなたもご存知のようにクルマも電話も悪ではない。

時代に合わせて情報伝達の形が変わっただけで、その本質は昔からあるのだ。

悪意ある情報操作者も昔から存在する。

事実、ソーシャルメディアが生まれる前からマスメディア等による虚偽報道、捏造報道は行われてきた。

古くは1891年東京日日新聞による西郷隆盛生還偽報道事件(西郷隆盛がシベリアで存命中と新聞報道された事件)から、朝日新聞の沖縄珊瑚記事捏造事件(KY事件)、従軍慰安婦問題まで。海外においても、ジミーの世界事件等々、インターネット普及以前からフェイクニュースは存在している。※詳しくは検索してみてほしい

もちろん、そんなものは人類の誕生の頃からずっと存在するものだろう。

そこには時代の変換や、テクノロジーの進化があっただけである。

むしろインターネット以前のフェイクニュースのほうが、国家規模の悪影響を与えている気がしてならない。日本は特に。ウィンストン・チャーチルは「嘘が世界を半周したころ、真実はまだズボンを履こうとしている」と言い、マーク・トウェインは「真実が靴を履く間に、嘘は地球を半周する」と言ったとか。当時のマスメディアの影響力と情報スピードはある意味現在のソーシャルメディアを凌駕しているのではないか?インターネットだからこそ急拡散するという意見も疑問だ。

インターネットやソーシャルメディアそのものは何も悪くない。ただの道具だ。

道具は使いようによって善にも悪にもなる。

包丁もクルマも。

なぜこうにもソーシャルメディアへの批判が多いのか?

フェイクニュースへの対策にしても、本来ユーザー側がリテラシーを高めるべきことであり、ソーシャルメディアの運営企業に責任を押し付けることでは無いはずだ。

それでも、新時代の聡明な企業は対策を打っている。

アメリカ大統領選後、ソーシャルメディアにおけるフェイクニュースの流布に対して批判が増したことから、Facebook社もTwitter社も、天下のGoogleグーグルも、即時に改善を約束。

どんどんとフェイクニュース排除へのアルゴリズムが組まれてきている。素晴らしいスピード感だ。

悪どころか、”ソーシャルメディア側”の企業のほうが、フェイクニュースへの対策を真剣に考えているように感じる。

既存メディアも何もしていないわけではない。英国放送協会BBCは「スローニュース」というスローガンを打ち出し、速報的な(ブレイキング)ニュースばかりではなく、検証や解説等で深堀りし、ファクトを重要視したニュースの配信も行なっている。

ドイツ政府はフェイクニュースに対し最大60億円の罰金法案を閣議決定

ドイツ政府は、フェイクニュース拡散を防止するため、ソーシャルメディア等の運営者に対し、違法な内容を削除しなければ最大5,000万ユーロ(約60億円)の罰金を科す法律の制定を目指すという報道があった。

これも疑問だ。

なぜ対象がソーシャルメディア等の運営者に絞られているのか?
新聞、テレビ、ラジオなどの既存メディアは対象とされないのか?

既存メディアだってこれまで多々のフェイクニュースを流してきたのに…

ここにも『ネットは悪』とする上の世代の姿が見え隠れする。

こんな法案が実際に制定されてしまえば、ソーシャルメディアの運営企業は萎縮してしまう。テクノロジーの後退にしかならない。

ユーザーの悪意に対し、ソーシャルメディアの運営企業が全責任を負わなくてはならないと言うならば、私が社長ならドイツでの利用禁止を利用規約に入れるだろう。

テクノロジーに責任を押し付けているようでは、そこに進歩は無い。

悪はインターネットでもソーシャルメディアでも無く、マスメディアでも無い。フェイクニュースサイトを作るWebライターであり、虚偽報道、捏造報道をつくりあげる記者なのだ。

なんでもかんでも『ネットが悪い!』で片付けようとする、思考停止状態のオジサンたち(私には…あぁ面倒くさい。。。)には、もう少し新しいものを受け入れる姿勢を持ち『本質は何か?』を見極められるようになってほしいと感じる。

フェイクニュースを誤って共有しないためには、私たちひとりひとりがリテラシーを高める努力をするしか、解決方法は無い。

基本は一次情報のチェックだが、それだけで防げるものでも無く、鍛えられた嗅覚というか感覚的なものも必要となる。

こればっかりは訓練しかない。

たくさんの情報を浴びて、吟味できるだけの経験を積むのだ。

これは私を含め、すべての人が日々研鑽すべきことなのだろう。

テクノロジーに責任を押し付けているようでは、そこに進歩は無い。

追記〜 政治とフェイクニュース、フェイクとは断定できない印象操作は…

政治という分野は世論の注目度も高く、思想信条への強い思いからフェイクニュースを信用しやすい人が多い傾向にもある。

事実、政治をネタに数千万PVを叩き出し、アフィリエイトフィー(広告収入)を荒稼ぎしたフェイクニュース製作者は存在する。日本にも、まとめサイトを中心としたかなり際どいサイトが多数存在しているのだ。

そして政治というネタほど、真実と嘘の線引きが難しいケースが少なくない。フェイクとは断定できない”印象操作”レベルのものも多い(これこそ悪意あるマスメディア記者の得意技だったりもするが…)。

すべての人や国に思想信条が存在し、異なる宗教が存在する以上、何が真実か?を判断するなどという行為は、人類史上最も難関な問題なのかもしれない。

確認しようも無いことも多いのだから。

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落合正和
株式会社officeZERO−STYLE代表取締役
一般財団法人モバイルスマートタウン推進財団 副理事長兼専務理事
マーケティング・コンサルタント&Webメディア評論家&ブロガー
ブログやSNSを中心としたWebメディア、生成AI活用が専門。ネット事件やサイバー事件、IT業界情勢、インバウンド観光、生成AIリスクなどの解説で、メディア出演多数。 ブログやSNSの活用法や集客術、SEO、リスク管理等の講演のほか、民間シンクタンクにて調査・研究なども行う。 著書: 会社のSNS担当になったらはじめに読む本(すばる舎) ビジネスを加速させる 専門家ブログ制作・運用の教科書(つた書房) はじめてのFacebook入門[決定版](秀和システム)